✶ 巌嶺の峰
山嶺が足元より競り上がり、頂に雪が煌めき、霧が峰を渡る。
Grimoire
壁に貼られた羊皮紙の写し — 時計「懐刻」の全所作を記す。
時計に触れれば、蓋は開き、また鎖される — 開けば留め金の煌めき、鎖せば柔らかな収まりの音が鳴る。
横に薙ぎ払えば、閃光とともに刻は封じられる。
蓋を鎖せば周囲に力が満ちはじめ、六秒で満ちる。満ちてから開けば「汝、刻限を解き放て」— 金色の奔流が迸る。
そして百度、蓋を開いた者には —「汝、我を拡散せよ」の勅が降りる。
時計は鎖に吊られ、本物の振り子として揺れる。
端末を傾ければ、時計は真の「下」へ垂れる。振れば慣性が時計を振り回し、強く振れば勢い余ってクルクルと回転する。
揺れるほどに鎖の輪は擦れ合って鳴り、淡い七色のオーラが時計をまとう。激しく振り回せば、重い鎖の響きが擦れ音に重なる。
だが天辺を越えて一回転するたび — 鎖は疵を負い、朱の閃光が二度瞬く。疵が深まるほど、朱は濃くなる。
縁を掴んで鎖を中心にぐるぐると廻し、十二回転を数えれば — 魔法が顕現する。
だが三十六回— 廻しすぎれば鎖は断たれ、時計は虚空へ消える。断たれた刻の巡り合わせで、再召喚の儀はふたつのいずれかが課される — 印の儀(示される印の順に画面を薙ぐ)か、星辰の儀(五芒の星を一より順に一筆で辿り、始まりの星へ還す)。違えれば初めから。儀を経ずとも、一刻(一時間)の後には自ら還る。
五分のあいだ何にも触れずにいると、時計は振り子時計のように静かに秒を刻みはじめる。
端末を横たえて三十六秒 — 鎖は断たれて時計は落ち、盤上には「安置の景」が起つ。魔法陣をまとう懐中時計が蓋を開き、デジタルと暦が並ぶ。起こせば元へ還る(iPad では起たない — 横置きが常の姿のため)。
景には天の相 — いまの空模様と気温も浮かぶ(位置が許されし時。Apple Weather による)。
盤面の中央を円を描くように撫でれば、巻上げが始まる。
一周ごとに魔法陣の菱形がひとつ灯り、十二周で魔法が放たれる。
蓋が開いているか、鎖されているかで、放たれる魔法は変わる。四秒間手を止めれば、巻きは霧散する。
開いて放てば、夜は魔導・昼は秘術が目の前で全き姿を見せる。鎖して放てば「封呪」— 蓋そのものに働く、昼夜共通の別なる術が顕現する。
魔法は十二 — 宮にひとつずつ宿り。月の宮に連なる。
山嶺が足元より競り上がり、頂に雪が煌めき、霧が峰を渡る。
足元に波紋が広がり、飛沫が重力で弧を描く。
相逆う二流の泡が時計を巡って泳ぎ、弾けて光になる。
火の粉が奥行きを持って揺らめき、舞い上がる。
大地が震え、琥珀の楔が突き上がり、土煙が舞う。
風の筋が時計の前後を廻り込み、風圧で時計が揺れる。
銀の潮が満ちて帳となり、三日月が静かに昇る。
刻の濁りを暁の光で浄め、金色の光塵が天へ昇る。
白金の穂光が螺旋に昇り、場を清める。
針が高速で逆行し、砂金の渦が反時計回りに巻き戻る。
紫紺の閃光が結界を張り、衝撃が走る。
季節の星座が燃え上がり、星々が四方へ飛散する。
昼のあいだ、太陽は魔導を封じる — 代わりに六つの「秘術」が応える。
日輪が環となって広がり、光条が悠然と廻る。
焔の羽根が両翼となって舞い上がり、火の粉を残す。
陽炎が立ちのぼり、景色がゆらりと揺らめく。
大いなる翼が三度羽搏き、火の粉が渦を巻いて舞い上がる。
木漏れ日の光だまりが、ゆっくりと流れて明滅する。
金の粉が驟雨となって降りそそぎ、煌めいて消える。
封呪 — 蓋を鎖して放つ術。蓋そのものに働き、昼夜を問わない。
巨大な封印の円環が蓋に押印され、衝撃と共にゆっくり廻る。
金の鎖が四方より時計を縛り、締め上げ、弾け散る。
暗紫の帳が蓋を蝕み、縁に金環(コロナ)が輝く。
紫白の雷が天より蓋を撃ち、火花が散り落ちる。
流星の群れが斜めに降りそそぎ、縁で瞬いて消える。
相逆う二重の焔の環が、時計を檻に閉じ込める。
術ごとの詠唱の数(詠唱録)と偉業の頁は、汝の時計の中にのみ刻まれる。
この時計は、まことの日の出・日の入りに従い「昼の相」と「夜の相」を移ろう(位置が許されぬ時は、六時より十八時までを昼と見做す)。
昼 — 地は淡紅に、盤はルビーに染まり、蓋には不死鳥が日輪を背に翼を広げる。夜 — 瑠璃と月星が還り来る。
十六時を過ぎると、文字盤の縁から紫紺の澱が満ちはじめ、深夜に極まる。
暁四時、上方からの光とともに濁りは浄化される。
日没の頃、季節の星座が金色に浮かぶ。春は獅子、夏は蠍、秋はカシオペヤ、冬はオリオン。
魔導設定で「帳の儀」を灯し、画面上部の感覚(近接)を掌で覆えば — その刹那、昼であろうと五分のあいだ夜の帳が降りる。画面は一瞬闇に沈み、夜の姿で灯り直る。
明けの間際、画面は暁の光にゆっくりと白み、切り替わる刹那に極まって、やがて元の明るさへ還る。
蓋の紺瑠璃には、月の宮が金で刻まれる。
昼、蓋はルビーに転じ、不死鳥が日輪を背に翼を広げる(PHOENIX)。
星々は奥行きを持って廻り、時折、宮の姿(彫像)が浮かんで消える。
「ZODIAC」の間にて、十二ヶ月すべての紋を検分できる。昼は光に霞んで見えづらい。
長針が十二を指す刻の頭 — その刻の数の宮が、星々を結びながら盤上に顕現する。ZODIACの間でも、紋に触れれば同じ顕現が見られる。
宮の顕現が静まると、選ばれし魔導(夜)/秘術(昼)がひとりでに続いて顕現する。
「相貌の儀」を灯していれば、術ののちに Face ID が時計の主を検分する — 主でなければ、魔法陣が誘いの紋(QR)を掲げる。
Siriに「汝、懐刻せよ」と唱えれば、懐中時計は応える。「懐刻せよ」「懐刻」「ポケットチャイム」でも通じる。
汝(なんじ)は何時(なんじ)に通ず —「何時?」と問う声もまた、召喚の呪いとなる。
唱えても別の術(刻限計等)に化ける時は、「懐刻を開いて」と添えよ。
別の言葉で呼びたければ、ショートカットアプリでその名を与えよ。
「刻告鐘」の間にて、鳴らすべき刻を封じる。
時刻は懐中時計の針を直に掴んで合わせる。分針を廻せば時針も従い、一分ごとに竜頭の手応えが返る。時針・分針、午前・午後は下の印で切り替える。
曜日の印を選べば繰り返し(何も選ばねば一度きり)。銘(ラベル)と微睡(スヌーズ、一〜三十分)、鐘の音も刻める。
一覧では、封じた刻を指すミニ懐中時計が各行に灯る。印で有効と無効を切り替え、塵の印で葬る。
刻限が至れば、システムの鳴動とともにアプリでは金色の大発動 —「刻限、到来せり」。スヌーズを選べば、猶予ののちに再び鳴る。
「刻限計」の間にて、分と秒を定め「刻を砂で埋めよ」— 砂時計が一回転して刻が流れはじめる(待機中は触れても廻る)。
砂は重力で加速して落ち、着地で爆ぜ、括れから魔力が漏れる。周囲ではラテン語銘の魔法陣が廻り続ける。
残り時間はロック画面と Dynamic Island にも宿る(Live Activity)。一時停止・再開はそこからでも行える。
一分・三分・五分・十分のプリセットも備える。
刻が満ちれば、結びし鐘が鳴り響く — 魔導の鐘・大鐘楼・星のオルゴール・魔導聖鐘(重厚)・暁の聖歌(明るき讃美歌)。
既定の「刻に従う」は、鳴る刻が昼なら暁の聖歌、夜なら魔導聖鐘をひとりでに選ぶ。微睡(スヌーズ)を選べば、しばしの後に再び鳴る。
「刻止計」の間にて「刻み始める」— 魔法陣の中で経過が刻まれ、秒のリングが廻る。
「区切り」で途中の刻を書き留める(区間差も添えられる)。「静止」ののち「再開」か「戻る」。
そして刻を計るあいだ、十秒を数えるごとに十二宮の魔法が宮の順にひとりでに顕現する。
間を閉じても刻は流れ続ける。蓋はひとりでに鎖され、その上に刻止計の盤が透けて映る — 経過も秒のリングも銘もそのままに、十秒ごとの魔法も止まらない。
そのあいだ、ホームの「刻止計」の釦はルビーに灯り、実行中を示す。静止と区切りは、刻止計の間に戻って行う。
アプリを離れても、刻止計はロック画面と Dynamic Island に宿る(Live Activity)。
「世界」の間にて、八つの都(東京・倫敦・巴里・紐育・羅府・悉尼・杜拝・新嘉坡)の刻が同時に流れる。
各都にはその刻を指すミニ懐中時計が灯り、端末との時差と、昼(☀)か夜(✦)かが添えられる。
「魔導」の間にて、時計の外装を選ぶ — 金は狩猟時計(紺瑠璃の盤にローマ数字とスペード針)、銀は鉄道時計(白盤にアラビア数字と棒針、朱の秒針)。
外装は鎖・砂時計・魔法陣・文字・ウィジェットまで即座に染め替え、予約済みの刻告鐘の配色も改まる。
「緋の徽章」を灯せば、アプリの徽章(アイコン)は不死鳥の蓋 — 昼の装いとなる(外装の金銀より優先)。
魔法スロット(蓋を開きし時/鎖せし時)を選び、「効果の間」で印に触れれば試し撃ちができる。
外装を替えれば、ホームに置かれたアプリの紋章(アイコン)もまた金と銀に切り替わる。
魔導は夜の秘術 — 太陽が魔導を封じるのだ(外装の切替と諸々の儀は昼も成る)。
「日の出・日の入の報せ」を灯せば、暁と黄昏の刻に日替わりの詩句が報せとして届く。
「汝への予言」を灯せば、その日これから始まる直近の約定が、紫水晶の留めとともに文字盤の下に映る。触れれば暦が開き、予定なき日には何も映らない。
この刻は Apple Watch の腕にも宿る — 盤は本体と同じ(昼のルビー・夜の澱と星座)。触れるか、指を二度打ち鳴らせば(ダブルタップ)蓋が開閉する。
iPhone と Watch は共鳴する — 片方の蓋が開けばもう片方も開き、腕の儀の閃光は iPhone の術を呼ぶ。そして iPhone で術が放たれれば、腕にも同じ術が鼓動と共に顕現する(双方の間が開いている時)。
腕の徽章(アイコン)は緋の不死鳥にて固定 — watchOS は徽章の掛け替えを許さぬため。
腕を廻せば一廻ごとに小さな鼓動が刻まれ、十二たびで魔法が閃き、三十六たびで鎖が断たれる — 触れて、再召喚の儀を。
ウィジェットの時計に触れれば、その場で蓋が開き、また鎖される。毎正時にはその刻の宮が盤上に顕現する(次の刻限のウィジェットは刻告鐘の間を開く)。
腕とウィジェットの昼夜は、端末の時差から推した日の出/日の入りに従う(本体は、位置が許されていれば実際の空に従う)。
帳の儀もこの間で灯す。Siriの言葉とショートカットへの導もここにある。
二本の指で画面を叩けば、時計以外のすべてが姿を消す。もう一度で戻る。
端末を傾ければ、真鍮の光沢が時計の上を走る。
右上の印、あるいはこの書の巻末から、この時計を友に伝えられる。
すべての演出は「視差効果を減らす」設定に従い、静かに減衰する。
初めて時計を開いてから三日は「試しの刻」— すべての魔導が開かれている。
試しが満ちてのちの無料の枠は — 魔導は紅蓮の焔と星宿の嵐、秘術は日輪の環、封呪は封印大紋、鐘は魔導の鐘、外装は金。
「生涯の契り」(¥500)を結べば、末代まで全てが解き放たれる。誘いの紋(QR)を潜りし者には「誘いの契り」(¥380)の値が開く。月ごとの「月契」(¥100)もある。
献香は感謝の香 — 機能とは関わりなく、この時計の火を支える。
これより先、秘蹟を記す。その名は —
(この先は破り取られている。全文は、時計の中で相貌の儀を経た者だけが読める)
更新されるとき、
失われし魔導が復活するであろう